「ザ・ロード」

ザ・ロード

ザ・ロード

★★★★☆
 恐らく核戦争後の荒廃した世界という設定自体はありがちなのだが、そこを旅する父子とその灰色の世界のイメージが、ぽつりぽつりと交わされる「」のない会話や、読点のほとんどない地の分によって研ぎ澄まされていく。傍らに暴力が過ぎ去っていくような不思議な荒涼感の中で、ぐるぐる回る「善き人」や「火を運ぶ」という言葉のイメージ。映画化も決まっているようだが、映画に毒される前に読むべし。

「だれも知らない小さな国」

★★★★★
 今更説明を要しない日本の児童文学とファンタジーの金字塔。小学生の頃の愛読書だ。確か、私が初めて図書館で注文した本も、コロボックルシリーズの続編だった気がする。渋谷区の推薦図書になっていた為、子供のために借りてきたのだが、ついつい自分で読書。思い入れが大きいので5つ星。

「ウォッチメーカー」

ウォッチメイカー

ウォッチメイカー

★★★★★
 読み終えてから振り返ると、犯人がこんな手の込んだことをやる必要があるのかと疑問も起きるのだけど、各キャラクターの活躍と、緻密に練られた展開とに引き込まれる。5つ星はちょっとためらったのだけど、本書につけないとミステリーには5つ星がなくなってしまいそうなので。

「幸福な食卓」

幸福な食卓

幸福な食卓

★★★☆☆
 「父さんは今日で父さんをやめようと思う」という書き出しで掴みはバッチリ。ちょっとヘンな家族とその兄妹の恋人達が、ほのぼのと「優しく」描かれる。(この軽いタッチの「優しさ」に読者の好みは分かれるようだが。)物語の設定は自殺未遂・家出・クラスメイトとの軋轢・恋人の死とかなりベタだが、オープニングの巧みさが全ての欠点をカバー。

「絶対帰還。」

絶対帰還。

絶対帰還。

★★★☆☆
 いつ地球に帰れるか分からないまま、宇宙ステーションに長期滞在を余儀なくされた宇宙飛行士達を巡るノンフィクション。本の雑誌で1位になっていたので借りてみた。豊富なエピソードが面白い。宇宙ステーションがどういうものなのかが綿密に描かれる筆力も見事。